呼吸器外科領域における内視鏡手術は、主な手術操作の場である胸腔内で内視鏡を使うので胸腔鏡(補助)下手術と呼びます。胸腔鏡を利用することで、手術野をビデオスコープシステム技術の進歩による鮮明な高解像度画像でモニターへ映し出して、特別に設計された器具を用いて手術するので、胸腔鏡を用いない手術と比べて、より小さいキズ1〜3つ程度により肋骨を切除することなく手術するので患者さんへの負担が軽いと考えられています。対象は肺癌、気胸、縦隔腫瘍、転移性肺腫瘍、膿胸を含む胸水貯留など幅広く範囲で、病変の大きさ、周囲組織への浸潤などそれぞれの状況を考慮して適切に胸腔鏡下手術を選択します。
本邦において増加傾向にある全肺癌手術約44,000件/年のうち、胸腔鏡下手術の割合は約70%にまで登っています。胸腔鏡下手術は、肺癌の進展度分類のI期に提案されているアプローチとなっており、胸腔鏡を用いない開胸手術と比べ治療成績・合併症率・術後疼痛が優れているという研究結果もあります。当院では積極的に胸腔鏡下手術を取り入れてきており、2020年度は肺癌手術の71%が適応となりました。
気胸において、全国的に行われている約15,000/年の手術のうち98%に胸腔鏡下手術が行われており、当院でも全例が胸腔鏡下手術の適応となりました。さらにひとつのキズで手術を行う単孔式胸腔鏡下手術も取り入れています。
そのほか縦隔腫瘍、転移性肺腫瘍、膿胸、胸膜疾患の診断、手掌多汗症などに適応しています。