産婦人科で行っている内視鏡手術

産婦人科で行っている内視鏡手術には腹腔鏡下手術、子宮鏡下手術があり、開腹手術を含めて担当医が診察(MRI)で判断を行います。

内視鏡手術が出来ない場合もありますのでご了承下さい。また、当院では悪性疾患への対応っていませんので、悪性が疑われた場合は他院への紹介となる可能性があります。

腹腔鏡下手術

2~4個の小さな切開(5~12mm)を入れ、炭酸ガスでお腹の中を膨らませて行う手術

子宮鏡下手術

子宮内にカメラ付き手術器具を子宮内に挿入して行う手術(創部が必要ない)

腹腔鏡下手術を受けられる方へ

1. 腹腔鏡下手術とは

お腹に数か所の小さな穴(2~4か所)をあけ、炭酸ガスを入れてお腹の中を膨らませてスペースを作り、そこからスコープや器具を入れて手術を行う方法です。

腹腔鏡下手術の様子
腹腔鏡下手術後の傷(4箇所)
12mm前後の穴が2箇所、5mm前後が2箇所(基本)

2. 腹腔鏡下手術のメリット

腹腔鏡下手術は開腹手術と比較し以下のような特徴があります。

  1. 手術の傷が小さく美容的
  2. 術後の痛みが軽い
  3. 入院期間が短い(早く退院できる)
  4. 早期の社会復帰
  5. 術後の癒着が少ない(卵管などの癒着が起こり難く、術後不妊症になることが少ない)

しかし、腹腔内の状態や手術の難易度により以下の留意点があります。

  1. 開腹手術への移行:腹腔鏡下手術が安全に行えないと判断した場合
  2. 輸血:術中・術後に予期しない出血があった場合(全症例で術前に輸血の同意書をいただきます)
  3. 最終診断は術後の組織検査で確定:術前診断と異なる場合、開腹手術が必要になる可能性
  4. 他臓器の損傷:隣接臓器である尿管や膀胱、直腸の損傷(子宮内膜症などで高度な癒着がある場合)

3. 腹腔鏡下手術以外の治療の選択肢

良性卵巣嚢腫 経過観察、開腹手術
子宮内膜症 経過観察、開腹手術、ホルモン療法
子宮筋腫 経過観察、開腹手術、子宮動脈塞栓術(UAE)、ホルモン療法
不妊症 体外受精など
子宮外妊娠 開腹手術、薬物療法

4. 入院期間、費用

原則として入院期間は5泊6日(手術前日入院、術後3日目退院)ですが、手術の状況や術後の経過に応じて延長となる場合があります。
手術はすべて健康保険が適応され、手術の種類により費用は異なりますがおおよそ40~80万円で、その3割が自己負担となります。(高額療養費の検討が可能です)

5. 入院後のスケジュール

入院

問診、シャワー

手術

朝:点滴
麻酔:全身麻酔

術後1~3日目

朝:採血
膀胱カテーテル抜去
ドレーン抜去(挿入時)
食事開始

術後4日目

退院

(症例に応じて手術前日夜、当日朝に浣腸を行う場合があります)

術中の所見により入院期間が延長することがあります。また、症例に応じて採血やレントゲン、診察、治療が追加される場合があります。

6. 術後の診療について

当院での外来経過観察を行いますが、かかりつけ医へ逆紹介となることもあります。ご理解をお願いします。

ERAS(Enhanced Recovery After Surgery:早期回復)という考え方

小さな創部で行う内視鏡手術においても術後にある程度の痛みは伴いますが、術中や術後に過剰な鎮痛剤を使用すると吐き気や嘔吐を伴う事があり、術後の早期回復(ERAS)を妨げる事があります。吐き気を伴わない程度に鎮痛剤をコントロールする事や吐き気を伴うと思われる術前処置を行わない事で、術後早期の回復(ERAS)が期待できます。また、絶飲食時間を短くし、術後早期から水分や食事を再開する事や早期の歩行開始なども術後早期回復(ERAS)を期待できる方法であり、当院ではこれらの術後早期回復(ERAS)につながる対応を積極的に行っております。

術後疼痛

術式に応じて、数種類の鎮痛剤を併用している。

術後の吐き気

制吐剤使用だけでなく、吐き気を誘発する過剰な鎮痛剤使用を控えている。

術前治療

不必要なものは、積極的に廃止。

絶飲食時間

可能な限り短縮する。

産婦人科で行っている内視鏡手術術式

  • 当院では、悪性腫瘍に対する内視鏡手術は行っておりません。
  • 手術の方法は、担当医がMRIなどを確認して提案させていただきます。希望通りに対応ができないこともありますのでご了承ください。

子宮筋腫

  • 腹腔鏡下子宮筋腫核出術(子宮筋腫のみ切除する手術)
  • 腹腔鏡下子宮全摘術
  • 子宮鏡下子宮筋腫核出術

子宮腺筋症

  • 腹腔鏡下子宮全摘術
  • 腹式子宮全摘術

卵巣嚢胞

  • 腹腔鏡下卵巣嚢胞核出術(卵巣の嚢胞部分のみ摘出する手術)
  • 腹腔鏡下付属器摘出術(腫瘍が存在する側の卵巣と卵管を切除する手術)

子宮内膜ポリープ

  • 子宮鏡下子宮宮内膜ポリープ摘出術

卵管腫瘍、異所性妊娠

  • 腹腔鏡下卵管摘出術

産婦人科で治療を行う病気の一例

子宮筋腫

子宮の筋肉に発生する比較的固い腫瘍で、女性ホルモンで増大する。子宮の内側に発生すれば出血症状(不正出血、月経量増加)や月経痛増悪などが起こることがあり、外側に発生すると圧迫症状(頻尿、腰痛、腫瘤感など)が発生することがある。

卵巣腫瘍

卵巣内に液状(固形)成分を含んだ嚢胞(袋)を作り、徐々に腫大する腫瘍であり、腫大した卵巣が捻じれたり、破れたり、他の臓器を圧迫したり、悪性化することがある。

子宮内膜症

不明な部分も多いが、女性ホルモンにより子宮内に子宮内膜が作られ、月経時などにお腹の中へ子宮内膜が逆流することがある。多くは、お腹の中で吸収されるが、お腹の中に生着すると、臓器が癒着したり、臓器の中に侵入し、臓器の一部が腫大することがある。その結果、特徴的な激しい痛みや月経量が非常に多くなったりすることがある。

内視鏡手術の手術件数推移

子宮筋腫核出術

子宮全摘術

卵巣嚢胞手術

子宮鏡手術